慶祝御卒業

令和3年3月19日の卒業式において、香川短期大学生活文化学科食物栄養専攻を卒業する皆さんへのメッセージです。

はじめに

 御卒業を寿ぎ、祝辞を申し述べます。
 平成31年4月香川短期大学に入学され、学び始めた同年5月には新しい御世が令和と改元され、初始から令和とともに歩まれて、本年3月に全員そろってめでたく御卒業を迎えられたことは慶賀の至りであります。誠におめでとうございます。
 朋友との談笑や交流、先生方からの学びや語らい等々、自由と愉楽の時を過ごした、この上もなく充実した学生生活であったことでしょう。これらの沢山の財産を所持して、実社会や進学へと、みずからの目標に向かって出立するスタートの時でもあります。

栄養士課程の学び

 本学での学びは数多ありますが建学の精神(愛 敬 誠)と専門的実学(実践学)との二つの肯綮に集約されます。
 実学では、栄養士の課程を専攻履修されて、身体的、心的、社会的健康には食が不可欠であることを学び、栄養士の職業が生活者の生命と健康に深く関わっていることを理解し、自得されたことと思量します。栄養士課程での学びは、栄養士資格取得の有無にかかわらず、生命活動の広範にわたり有益に活かせるものです。たとえば、美容関係の仕事に就いたとしても、食を通じて身体の内側から健康を確保し、そのうえ心的健康にも大きく貢献し、ひいては美容の増進に繋がる尊い実践学の応用的展開が可能であると言えます。
 食は古来より、人間生活において栄養性、嗜好性および健康性を満足させる根源的で必須不可欠の価値と存在意義を与えられています。紀元前400年頃古代ギリシャでは医学の父と呼ばれたヒポクラテスが「食を汝の薬とせん、薬を汝の食とせん」と説き、紀元前約1000年の古代中国では周王朝が天官と定めた医師の最上位に食医を位置づけ、洋の東西を問わず共に「医食同源」、「薬食同根」、「健食同体(健康=食)」の思想や制度がありました。事程左様に、食の必須性および重要性が古代より現在に至るまで強く認識されています。
 コロナ禍の今こそ栄養士の役割が肝要となり、コロナ後の世界では再び現代の食医として、古今東西を通じて枢軸的職業である「栄養士」の層一層の活躍が期待されてきます。

建学の精神の学び

 学祖様が精魂を尽くされた赤誠の教育理念である「建学の精神(愛 敬 誠)」を平明に説明すれば、「明き、清き、直き、正しき誠の心で、あらゆる事、あらゆる象、あらゆる物、あらゆる人に、つまり万事万象万物万人に、丁寧に親切に接すること」です。
 たとえば、「直き心」とは、素直な心、正直な心であることは勿論のこと、すべてにわたって、見直し、聞き直し、問い直し、調べ直し、学び直し、理解し直し、考え直し、思い直し、練り直し、遣り直し、正し直し、寛恕し直し、認め直し、許し直し、仲直りし、信じ直し、感謝し直し、する心です。もしかして、友人が約束を破ったと思われる時でも、直き心で、思い直し、恕し直し、信じ直し、誠意をもって接すれば、信頼関係が一層深まり芳醇な友情や永続的な交流を築くことができるものです。  
 また、各種の困難に遭遇した場合でも、コツコツと一生懸命真剣に対峙し取り組み、直き心で、見つめ直し、考え直し、遣り直せば、解決の糸口が見出されたり、ヒラメキが浮かんだり、周囲の人から協力が得られたり、状況が変わったりで、必ず解決に導かれるものです。自己の能力を超えた困難は登場せず、眼前の難問難題でも解決や処理のできない問題はなく、その人の能力に見合ったものが、みずからを鍛え磨き大きくするために、顕現し与えられるのです。
 これらのことは、建学の精神を拳々服膺し実践することによって得られる効験効果です。

むすびに

 香川短期大学で学んだことに誇りと使命感を持ち、本学での様々な体験や楽しかった日々を心の支えとして、夢と希望の実現に向けて活動していただきたいと思います。
 御卒業を記念して拙詠の和歌を贈ります。

 皆様のご健勝とご多幸を願うとともに、尊貴な御生涯が豊かで実り多いものとなりますことを謹んで祈念申し上げます。

令和三年三月十九日 卒業式挙行の嘉辰寧日

香川短期大学 生活文化学科 教授 竹安 宏匡