小豆島バレーを目指して

塩田幸雄 元小豆島町町長よりご依頼をいただき、小豆島の食品産業について講演させていただきました。講演のご感想をお示しいただきました町長ブログを以下に示します

 香川短期大学の竹安宏匡教授に小豆島産業会館で、小豆島の食品産業について講演していただきました。
 竹安先生は、かがわ産業支援財団の中山理事長に紹介していただきました。小豆島の食品産業の活性化を目指すなら、冷凍食品で有名な「加ト吉」の商品開発を担い、今は香川短期大学で教鞭をとっている竹安先生の力を借りるのが一番とのアドバイスをいただいたのです。大学に竹安先生を何度か訪ね、今日の講演が実現しました。
 講演は期待に違わぬものでした。加ト吉の成功も竹安先生あってのことと改めて思いました。短い準備期間にもかかわらず、示唆に富んだ元気の出るお話をしていただきました。
 小豆島の食品産業の現状について、我々が見過ごしている点を指摘されました。それは、米の消費量の減少に比べれば、小豆島の醤油、佃煮などの食品産業は売上げが減ってきているとは言え、減少幅が小さく、健闘していること、醤油の従業員一人当たりの生産性の高さなどを指摘されました。
 小さい島のなかに、これだけの企業が集積し、発酵技術などが蓄積されていることは大変な財産であり、これからの工夫、取組み如何によって、集積をさらに高め、研究開発をさらに高めることによって、食品産業の「小豆島バレー」を実現できるという、夢の持てる話をしていただきました。
 竹安先生は、世界における日本の特徴を評価します。日本は、古代と現代が同居し、文化の地層が視覚的に、露天掘りで現存し、先進国は日本の文化を学び自国を豊かにしようと考えている、途上国は日本の産業を学び自国経済を豊かにしようと考えていると指摘されます。
 そして四国は、その日本的特徴を凝集していること、88ヶ所の巡拝の聖地であること、日本一、世界一の企業の集密度が大である地域です。
 なかでも、小豆島は、自然、人情、産業等良きものが風化せずに最も多く残っている、日本人の忘れかけているものがたくさん残っている、最も海に守られている、十万(卍)おのごろ神島(キリスト教、仏教、神道のすべてが共存している島)、すべてが交差し交流する島だと指摘されました。
 小豆島は、これからの時代に求められる健康・観光・信仰・老若男女という活力のもとになる資源に恵まれています。
 健康については、食品産業との関係で、次の四点をあげられました。ひとつは、伝統食品を見直して現代に応用することです。ポイントは、発酵技術を生かしたバイオ産業に育成、装置産業と職人産業の調和(例えば木桶の醤油づくり)、小が大に勝ち共存するノウハウの普及です。ひとつは、オリーブ関連など新しい伝統産業の創出です。ひとつは、機能性食品素材の開発と商品化です。ひとつは、化石遺伝子の発掘(忘れられている資源、人材を生かす)、現行遺伝子(現有の資源、スタッフを磨く)の活性化、新遺伝子の開拓(新しい資源、外部人材を登用する)です。
 信仰については、四国に比べ、コンパクトに88ヶ所巡礼をできるメリットを活かし、歩きウォーキングの島四国を広める、これにあわせて高齢者がおもてなし、お接待し、島産品を販売する、四国巡拝の前参りとお礼参りをビジネスモデル化することを提案されました。
 老若男女については、全員参加の活性化、若者らの世界発信、長寿の健康の島をアピールすることを言われました。
 「小豆島バレー」実現に必要なものとして、竹安先生は①バイオテク②メディテク③ファーマテクをあげられました。バイオテクは醤油の発酵技術の蓄積があり、香川県の発酵食品研究所があります。メディテクは、新しい公立病院が担ってくれるはずです。ファーマテクは、オリーブの実績があります。三つのテクを磨ける可能性と規模が小豆島には備わっています。
 竹安先生の話のひとつひとつが、目から鱗がおちる話でした。小豆島が持つ素晴らしさや個性を活かして、地場産業が元気になる道筋を模索していこうと思います。(平成24年3月21日)